軸: 横断 | サーベイ 7·3 節

研究領域の拡張

定義

暗記に関する研究が言語モデルにとどまらず、他の領域へ拡張されている状況 (Ishihara 26 7·3)。

異なるモダリティを扱う場合、暗記の定義や定量化手法を再考する必要性も生じる

拡張先

他モダリティ

領域 出典
画像生成(拡散モデル) [Carlini 23a], [Gu 25], [Hintersdorf 24], [Somepalli 23]
視覚言語モデル [Carragher 25], [Jayaraman 25], [Li 24]
推薦システム [He 25]
音声 [Cheng 25a], [Huang 22b]

テキスト内の非自己回帰モデル

サーベイ 2 章は自己回帰型モデルを主対象とすると宣言しており、以下は 7 章で扱われる。

対象 出典
マスク型モデル(BERT 系) [Carlini 23b], [He 22], [Lehman 21], [Mireshghallah 22], [Nakamura 20]
単語埋め込み [Song 20], [Mahloujifar 21], [Meehan 22]
自然言語理解 [Parikh 22]
テキスト分類 [Elmahdy 22], [Nasr 19], [Zhang 22]
拡散言語モデル [Chen 26]

言語モデル台頭以前の知見の回顧

主要な論文

横断的知見

モダリティを変えると逐語一致が使えなくなる。 Ippolito 23 は、画像生成や剽窃検出といった研究領域での知見が 暗記の定義の改善に資すると主張した。画像ではテキストに比べて正確一致が困難なため、 類似度を考慮した指標が利用されている [Balle 22, Haim 22, Zhang 20]。 つまり他モダリティは「近似暗記しか測れない世界」であり、 テキストが逐語暗記に安住してきたことを逆照射する。 サーベイ 7·1 節の「暗記とは何かを改めて問い直す」という要請に、 最も直接的な素材を提供するのがこの領域である。

暗記の局在という問いがモダリティ横断で立っている。 [Hintersdorf 24] は拡散モデルで暗記を担うニューロンを特定する研究であり、 言語モデルにおける [Menta 25](知識編集)や [Hong 25b](推論と暗記を媒介する単一の方向)と同じ問いを扱っている。 モダリティより先に「暗記はモデルのどこに宿るか」という問いが共通の軸になりつつある

マスク型モデルは暗記量が 1 桁少なく、定義そのものを変える必要がある。 Carlini 23b は T5 で追試しており、 接頭辞→後続という定義(Definition 3.1)がそのままでは適用できないため、 「マスク言語モデリングのタスクを完全に解けたら暗記」と定義し直している (200 トークンの系列なら、170 トークンの文脈から残り 30 トークンを完全に予測できるか)。

結果、モデルサイズの傾向は再現したが、 絶対量は因果型より 1 桁小さい(T5-XL 3B: 3.5% vs GPT-Neo 2.7B: 53.6%、100 回重複時)。 文字列の重複に至っては単調ですらなくなる。

つまりモダリティを跨ぐ前に、同じテキストでも学習目的が変われば 定義の再設計と知見の再検証が要る。7·3 節が挙げる画像・音声への拡張は、 この作業をさらに大きな距離で行うことになる。

マスク型モデルの再評価が起きうる。 サーベイ 7·3 節は、 大規模言語モデルでの研究成果を活用した ModernBERT [Warner 25] が注目を集めるように、 マスク型モデルでの暗記の研究が再認識される可能性を指摘する。 サーベイ本体が対象外とした領域が、実務的な重要性を取り戻しつつあるという構図である。

モデル反転攻撃との同一視は、この分野の歴史的な位置づけを変える。 [Kandpal 22] は訓練データ抽出とモデル反転攻撃 [Fredrikson 15] をほぼ同一と位置づけた。 これが正しければ、訓練データ抽出は 言語モデル時代の新しい脅威ではなく、2015 年から知られていた攻撃の再来である。 剽窃検出 [Potthast 10, Roy 09] の回顧も同じ含意を持つ—— 近似暗記の指標設計は、ゼロから作る必要がない。

未解決の問い